「SES」や「派遣」という言葉を聞いたとき、「結局、何が違うの?」「自分はどっちを選べばいいの?」と迷ってしまうエンジニアは少なくありません。
どちらも企業に常駐して働くスタイルですが、雇用形態、指揮命令権、契約期間、そしてキャリアアップの可能性において、明確な違いがあります。
この違いを理解せずに選んでしまうと、「思っていた働き方と違った」「スキルアップの機会を逃した」と後悔することになりかねません。
本記事は、SESと派遣の仕組みからメリット・デメリット、そしてキャリアプランに合わせた最適な選び方までを徹底的に解説します。

【著者プロフィール】
江﨑 奈那
看護師/治験コーディネーター:3年
システムエンジニア:3年+
SESと派遣の比較表まとめ
SESと派遣の主な違いを、エンジニアが特に気になるポイントに絞って一覧表にまとめました。
| 比較項目 | SES(System Engineering Service) | 派遣 |
|---|---|---|
| 契約形態 | 準委任契約または請負契約 | 労働者派遣契約 |
| エンジニアの雇用形態 | 期間の定めのない正社員が多い | 期間の定めのある有期雇用(契約社員・登録型)が多い |
| 指揮命令権 | 自社(SES企業)にある | 派遣先企業にある |
| 業務内容の変更 | 比較的融通が効きにくい(契約内容に厳格) | 比較的容易(派遣先の指揮命令による) |
| 契約期間の制限 | なし(無期雇用が多いため) | あり(同じ組織で原則3年まで) |
| 給与形態 | 月給制(固定給) | 時給制または月給制 |
| キャリアの柔軟性 | 高い(多様な案件経験が可能) | 低い(3年ルールによる異動が発生) |
SES(System Engineering Service)とは?
SESは、自社の正社員エンジニアを、顧客企業(常駐先)に常駐させて、技術的なサービスを提供する契約形態です。
エンジニアに対する「指揮命令権」が、常駐先の顧客企業ではなく、所属するSES企業(自社)にある
顧客との契約は「準委任契約」または「請負契約」となることが多く、自社のエンジニアを派遣先に常駐させ、顧客の指示ではなく、自社の指示や契約に基づいて業務を遂行します。
万が一、業務上でトラブルが発生した場合や契約外の作業を依頼された場合、エンジニアは自社の営業や上長に相談し、自社を通して顧客と調整してもらうことになります。
派遣とは?
派遣は、派遣会社の契約社員または登録型社員として、顧客企業(派遣先)へ派遣され、派遣先企業の指揮命令を受けて業務を行う契約形態です。
エンジニアに対する「指揮命令権」が、派遣先企業にある
エンジニアは、派遣先の社員と同じように、派遣先の社員からの指示に従って業務を進めます。これは、一般的にオフィスワークや製造業などで行われる「一般派遣」と同じ仕組みです。
ただし、同一の組織で働くことができる期間は、原則として最長3年までという「3年ルール(抵触日)」があり、安定した長期の常駐は保証されません。
契約と指揮命令権の違い
SESと派遣の根本的な違いは、「誰の指示で働くか」、つまり「指揮命令権」の所在にあります。
指揮命令権は自社にあり、業務の進め方や範囲は契約に基づく。顧客が直接指示を出すことは契約上できない。
指揮命令権は派遣先にあり、派遣先の担当者からの指示に従って業務を進める。
この違いは、契約外の業務を依頼された際の対応や、働く上での精神的な負担に大きく関わってきます。
契約を守る意識の強いSES企業であれば、過度な残業や契約外業務からエンジニアを守ることができます。
雇用形態とキャリア形成の柔軟性の違い
| 項目 | SES(System Engineering Service) | 派遣 |
|---|---|---|
| 主な雇用形態 | 正社員(無期雇用) | 契約社員/登録型(有期雇用) |
| 長期的な安定性 | 高い(会社の都合がない限り継続) | 低い(3年ルールにより異動・契約終了の可能性) |
| キャリアの柔軟性 | 高い(営業努力で多様な案件に挑戦しやすい) | 低い(派遣先での業務範囲に限定されがち) |
SESは正社員雇用が多いため、長期的な雇用と安定した収入が得やすく、会社からの教育支援や福利厚生も受けやすい傾向があります。
一方、派遣は3年ルールがあるため、長期的に同じ場所で経験を積むのは難しくなりますが、その都度派遣先を変えることで、ある程度の期間で異なる環境を経験できる側面もあります。
しかし、キャリア全体を俯瞰したスキルアップ計画は、自身で意識的に立てる必要があります。
SESで働くメリット・デメリット
正社員として安定した基盤を持ちつつ、多様な現場で経験を積みたいと考えるエンジニアにとって、SESは魅力的な選択肢です。
嬉しい3つのメリット
1. 雇用が安定しており、キャリアチェンジが容易
SESの多くは正社員(無期雇用)としての契約であるため、常に安定した月給と賞与を得られます。
また、案件が終わっても会社都合で即座に解雇されるリスクは低く、給与をもらいながら次の案件を探す期間(待機期間)もあります。
さらに、自社の営業が案件を探してくれるため、開発言語や業界など、比較的容易に新しい分野へのキャリアチェンジを図りやすい点も大きなメリットです。
2.様々な企業文化や技術スタックを経験できる
SESの働き方は、多くの現場を渡り歩くことが前提です。
これにより、大手企業の堅実なプロジェクトから、スタートアップの最新技術を使ったアジャイル開発まで、短期間で多様な環境と技術スタックを経験できます。
これは、将来的にフリーランスや自社開発企業への転職を目指す上で、強力な実績と広い知識の土台を築くことに直結します。
3. 福利厚生や教育制度が充実していることが多い
正社員として雇用されるため、社会保険や厚生年金はもちろん、住宅手当、資格取得支援、社内研修、eラーニングなどの福利厚生が充実している企業が多いです。
特に、若手や未経験からスタートするエンジニアにとって、費用をかけずに体系的なスキルアップができる制度は、大きな支えとなります。
ここが残念!2つのデメリット
1.多重下請け構造になりやすく、給与水準が上がりにくい
SES業界は、大手SIerを頂点とした多重下請け構造になっていることが少なくありません。
下請けになればなるほど、企業が受け取る契約単価からマージンが引かれていくため、末端のSESエンジニアに還元される給与は低くなりがちです。
特に、マージン率(ピンハネ率)が不透明な企業に就職すると、自分のスキルに見合った報酬を得られない可能性があります。
2.帰属意識が低くなり、自社との連携が希薄になりやすい
常に客先で働くため、自社(SES企業)の社員との交流が少なくなり、企業に対する帰属意識が薄れやすい傾向があります。
また、技術的なOJTやレビューも、常駐先任せになることが多く、自社からのフォローが手薄になりがちです。
結果として、「自社の社風や技術がよくわからない」「キャリアの相談をする人がいない」と感じ、モチベーションの維持に苦労するエンジニアもいます。
派遣で働くメリット・デメリット
派遣は、ワークライフバランスを重視したい人や、特定の業務に特化して働きたい人にとって、魅力的な選択肢となり得ます。
嬉しい3つのメリット
1.ワークライフバランスが実現しやすい
派遣は、労働時間が厳格に管理されることが多く、残業が少ない傾向にあります。
これは、派遣先企業が「指揮命令権」を持つため、派遣元の会社が労働時間管理に非常に厳格なためです。
また、業務内容や勤務地、勤務時間などの条件を、派遣登録時に細かく指定できるため、自分のライフスタイルに合わせた働き方を選びやすいのが最大の魅力です。
2.未経験やブランクから復帰しやすい案件が多い
派遣の求人には、比較的定型的な業務やアシスタント業務が含まれることが多く、正社員のSES案件に比べて、未経験者や子育てなどでブランクのあるエンジニアが採用されやすい傾向があります。
まずIT業界に入り込みたい、特定の業務(例:ヘルプデスク、テスト)から慣れていきたい、というファーストステップとして利用価値が高いです。
3.トラブル時に派遣会社が強力にサポートしてくれる
派遣の場合、給与や福利厚生は派遣会社が、実際の業務指示は派遣先が行います。
もし派遣先でハラスメントや契約外の業務を強要された場合、派遣会社があなたの代わりに派遣先と交渉してくれます。
指揮命令権が派遣先にあるからこそ、労働者の保護という観点では、派遣会社が責任をもって対応してくれる安心感があります。
ここが残念!2つのデメリット
1.キャリアアップの道筋が描きにくい
派遣は「3年ルール」があるため、一つの現場で長期的に腰を据えて重要なポジションに就くことが困難です。
また、派遣先は即戦力を求めているため、高度な教育や研修を受けられる機会は限られます。
結果として、特定のスキルは伸びるものの、マネジメント能力や上流工程の経験が積みにくく、キャリアアップの限界を感じやすいことがあります。
2.3年ルールによる雇用の不安定さ
労働者派遣法により、原則として同じ組織での勤務は最長3年と定められています。3年が経過すると、別の派遣先へ異動するか、派遣会社との契約が終了になる可能性があります。
これは、スキルや経験に関係なく発生するリスクであり、長期的な雇用の不安定さは派遣の大きなデメリットと言えます。
どちらを選ぶべき?タイプ別おすすめ
SESと派遣、どちらが良いかは、あなたの現在の状況と、将来どのようなエンジニアになりたいかというキャリア志向によって異なります。
安定志向で安心して働きたい人は派遣
- 残業を極力減らしたい。プライベートの時間を確保したい。
- 特定のスキル(例:ヘルプデスク、テスター、OA操作)を活かしたい。
- 勤務地や勤務時間を細かく指定したい。
- 派遣会社のサポートを最大限活用し、トラブルを避けたい。
派遣は、ワークライフバランスを最優先し、特定の期間・特定の場所で、決められた業務をこなしたい人に向いています。
契約内容が明確で、時間管理も徹底されるため、「割り切って働く」という考え方の人には最適です。
スキルを広く積んでキャリアを伸ばしたい人はSES
- 正社員としての安定した雇用と福利厚生を重視したい。
- 将来的にフリーランスや自社開発企業への転職を目指している。
- 多様なプロジェクトや新しい技術に積極的に挑戦したい。
- 長期的な視点で、幅広い分野のスキルを積んで市場価値を高めたい。
SESは、雇用基盤を安定させながら、多くの現場経験を積み、スキルアップを目指したい人に最適です。
特に、キャリアの序盤で様々な技術に触れ、自分の適性を見極めたい若手エンジニアには非常に有益な選択肢となります。
迷ったら確認したいチェックポイント
迷ったときは、以下のチェックポイントを参考にしてみましょう。
□同じ会社で長く働きたい
□多少待遇が悪くても新しい技術に触れたい
□フリーランス/自社開発へのキャリアアップを考えている
上記の項目にあてはまる場合は、SESでの働き方が向いている可能性が高いです。
□働き方の条件重視で短期契約でもOK
□決められた範囲で安定した業務をこなしたい
□今のライフスタイルを崩したくない
上記の項目にあてはまる場合は、派遣での働き方が向いている可能性が高いです。
まとめ:SESと派遣、どっちがいいかは自分のキャリア次第
本記事では、SESとエンジニア派遣の違いを、雇用形態、指揮命令権、キャリアの柔軟性という観点から比較しました。
正社員の安定と多様な現場経験を両立させ、将来のキャリアアップの土台を築きたいエンジニアに最適
ワークライフバランスと特定の業務への集中を重視し、ライフスタイルに合わせて働きたいエンジニアに最適
どちらを選ぶべきかという答えは、「エンジニアとしての理想の働き方」の中にあり、エンジニア一人ひとりによって異なります。
本記事で解説したように、両者の違いやメリット・デメリットを深く理解し、エンジニアが「どんな働き方をしたいか」、「どんなキャリアを築きたいか」で選択することが何よりも大切です。
自分のキャリアや生活スタイルを基準に、最適な選択をしていきましょう。

【著者プロフィール】
江﨑 奈那
看護師/治験コーディネーター:3年
システムエンジニア:3年+

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