SESの残業事情とは?みなし残業制の仕組みやブラックな案件の回避方法を解説!

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「SESは残業時間が多くてブラック」というイメージを持っている方は少なくありません。

しかし、実際には、案件や企業体制によって労働環境は大きく異なります。

本記事では、SESにおける残業の実態やみなし残業制の仕組み、残業を回避するための面談時に確認すべきポイントなど、エンジニアがより働きやすい環境を獲得するための具体的な対策について紹介します。

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【著者プロフィール】
前田 奈央子
エンジニア歴: 7年+
システムエンジニア歴(バックエンド): 3年+

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目次

SESエンジニアの残業実態とは?

SESエンジニアの働き方は、参画している案件ごとに異なり、残業の実態も現場次第で大きく変わります。

残業が多い現場もあれば、毎日定時が当たり前で残業は少ないという現場も存在します。

しかし、「SESは残業が多そう」というネガティブイメージを抱く人は少なくありません

ここでは、実際の平均残業時間やSESは残業が多いと言われている理由について、解説していきます。

SESは残業が多いと言われる理由

SESの「残業が多い」と言われる理由について、主に以下の2つの理由が挙げられます。

  • IT業界が慢性的な人手不足であるから
  • 稼働時間(清算幅)を契約で決定されているから

それぞれについて解説します。

IT業界が慢性的な人手不足であるから

経済産業省の調査「IT人材需給に関する調査(概要)」では、若年層の人口減少、入職者よりも退職者が上回るなどの理由から、IT人材は減少傾向であると報告されています。

IT人材は減少しているにも関わらず、IT関連の案件やプロジェクトは増加しており、需要と供給のバランスが崩れている状況です。

そのため、IT人材は今後も不足すると予想され、2030年には最大で79万人不足すると言われています。

引用元:IT人材需給に関する調査(概要)

このような現状を受け、「人手不足=ブラック=残業が多い」イメージにつながっていると予想することができます。

稼働時間(清算幅)を契約で決定されているから

SESの「残業が多い」というイメージのもうひとつの原因として、SES契約の特徴から起きる稼働時間の変動性によるものがあります。

例えば、月の稼働時間を140時間で契約した場合、ある月の稼働日数が20日の場合は1日7時間の稼働が必要となります。

しかし、年末年始やゴールデンウィークなどの祝日が多い月では、稼働日数が18日しかないため、1日7.7時間以上働かなければなりません

このように、残業が多いと感じる背景には、SES契約の稼働時間による仕組みが関係していることがあります。

平均的な残業時間の目安

SESを含めIT業界は残業が多いというイメージをもたれがちではありますが、実は突出して多いわけではありません。

厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報」などの指標を参考にすると、平均残業時間は「16.2時間」時間であり、情報通信業の所定外労働時間は前年度よりも減少傾向にあります。

もちろん、納期や繁忙期やトラブル対応などでは一時的に残業が増えることはありますが、近年では働き方改革の影響もあり、クライアント企業側もコンプライアンス遵守を徹底しているため、過剰な残業時間を強いる現場は減ってきているのです。

したがって、「SES=激務」と決めつけるのではなく、実態としては月10時間前後の現場もあることを理解し、適切に案件を選ぶことが重要となります。

SESエンジニアに聞いた!実際残業はどうだった?

ここでは、実際にSESエンジニアとして働いている方にインタビューし、残業時間に関する経験談を紹介します。

新人ITエンジニアAさんの体験談

「スキル低いても参画できる現場だったが、少しプロジェクトが遅延気味で忙しかった。
特に毎日ノルマがあり、最初の頃はノルマが守れなくて1~2時間くらい残業をしてた。
繁忙期を過ぎたら急にノルマもなくなり残業がなくなった。
ITに転職して初めての現場だったから、こんなに残業するのかと最初はびっくりした。」

上記の体験談では、どうやら残業の多い案件に参画してしまったようです。

プロジェクトの遅延や繁忙期によっては、残業が多いという案件はどうしても存在します。

しかし、喉元を過ぎればあまり残業がなくなるというケースもあるためすぐに「この案件は残業が多くブラックだ」と判断するのは危険かもしれません。

中堅インフラエンジニアBさんの体験談

「インフラの運用・保守。その常駐先では定期的に繁忙期があったのでサイクルが分かりやすかった。
3~4か月に1回くらい残業が発生する月があったけど、それも月10時間くらい。
固定残業代が出ていて、10時間以上超えないと追加の残業代は発生しなかったから、残業代で稼ぐということができないのはデメリットではあるかもね。」

上記の体験談では、基本的に残業のない月が多いというケースとなります。

「残業代で少しでも稼ぎたい」と思っていても、そもそも残業がない場合には残業代を稼ぐことはできないという意見もあるようです。

残業量は個人では対策しようがないこともあるため、残業が少ない現場であっても、そもそも給与が十分に支給されるSES企業に勤めておくことも大切です。

SESにおける残業代の仕組み

SESで働くうえでは、「みなし残業制(固定残業代制)」について、正しく理解しておくことが重要です。

ここでは、みなし残業制の仕組み超過分について詳しく紹介していきます。

給与や年収に関わる重要な項目であるため、しっかりと理解し、案件選びの参考にしてください。

みなし残業制とは?基本的な仕組み

みなし残業制とは、あらかじめ一定時間の残業代を給与・報酬に組み込む仕組みのことを指します。

例えば、給与や報酬の情報で、「月20時間のみなし残業代を含む」という案件があった場合、実際月の残業が6時間であっても、20時間分の残業代が支払われる形となります。

労働者にとってメリットもある一方、みなし残業代分の時間に満たなければ追加の残業代はありません。

そのため、給与+みなし残業代(固定残業代)の額が高単価だったとしても、内訳によっては実は割安な場合もあります。

具体例で解説していきます。

<求人A>
給与 : 40万円
※みなし残業代(固定残業代)を含みます。
※みなし残業時間40時間を超過する場合は追加支給いたします。

<求人B>
給与: 37万円
※みなし残業代(固定残業代)を含みます。
※みなし残業時間20時間を超過する場合は追加支給いたします。

上記の例では、給与だけ見ると、Aの方が高く魅力的に感じます。

しかし、実際に、月の稼働時間160時間として、みなし残業時間の最大限に働いた場合、時間単価はどうなるでしょうか。

案件A:400,000÷(160+40)= 2,000 = 時給2,000円
案件B:370,000÷(160+20)= 2,055.555… =時給2056円

上記のように、みなし残業時間の最大限に働いた場合は、Bの方が高い時給となります。

しかし、みなし残業時間が設定しているからといって、毎月みなし残業時間分働くとも限りません。

そのため、みなし残業の時間と金額、また月残業時間の平均をそれぞれ考慮して案件を選ぶことをおすすめします。

超過分の残業代は支払われるのか

みなし残業制を採用している企業であっても、設定された固定残業時間を超えて働いた分の残業代は、法律上必ず支払われなければなりません。

労働基準法において、固定残業代はあくまで「一定時間分」の前払いに過ぎないと定められています。

そのため、その時間を1分でも超過した場合は、企業側に追加の割増賃金を支払う義務が発生します。

「みなし残業30時間」の契約で、繁忙期に45時間の残業を行ったとします。

この場合、30時間を超えた「15時間分」については、別途残業代としての支給が義務付けられています。

つまり、「みなし残業だからいくら働いても給料が変わらない」ということではありません

自身の契約内容と残業の実績時間を照らし合わせ、超過分が正しく支払われているか給与明細を確認する習慣をつけましょう。

サービス残業のリスク

SESで働くうえで警戒すべきは、働いた時間を正しく申告できない「サービス残業」の発生です。

これは違法行為であり、正当な対価が得られない大きなリスクとなります。

サービス残業が発生する原因の一つに、クライアントへの請求時間と、自社への勤怠報告のズレがあります。

プロジェクトの予算上限が決まっている場合、現場の責任者から「予算オーバーになるから、定時で帰ったことにして作業してほしい」といった圧力をかけられるケースが存在するためです。

その通りに記録してしまうと、実際には深夜まで及ぶ長時間の残業をしていても、記録上は残業ゼロとなり、残業代は一切支払われません。

このようなサービス残業は、エンジニアの心身を壊す原因となります。

もし隠れ残業を強要されるような現場であれば、早急に自社の営業担当へ相談する必要があります。

残業が多いSES案件と少ない案件の違い

SESでの残業は、「案件によって決まる」と言われるほど、環境差が大きいのが特徴です。

残業が多い案件には共通した特徴があり、逆に残業がほとんどないホワイト現場にも一定の傾向があります。

この傾向を知っておくことで、自分に合った働き方ができる案件を見極めることができるでしょう。

残業が多い案件の特徴(炎上プロジェクト・客先体質)

残業が極端に多い案件には、プロジェクトが既に遅延している「炎上案件」か、クライアント企業の体質自体が長時間労働を美徳としているケースが大半です。

炎上案件では、当初の計画通りに開発が進んでおらず、納期に間に合わせるためのリカバリーとして大量の工数投入(人員増加もしくは残業を増やす)を行う必要があります。

また、元請け企業のマネジメント能力が低い、あるいは「残業してでも終わらせるのがプロ」という古い体質の企業では、定時で帰りにくい同調圧力が働きます。

具体的な兆候としては、面談時に「体力に自信はありますか?」「スケジュールがかなりタイトです」といった発言が出る案件は要注意です。

また、仕様変更が頻繁に発生しているのに納期が変わらないプロジェクトなどは、必然的に残業でカバーすることになり残業時間も比較的多い傾向にあります。

上記のような環境下では、個人の努力だけで残業時間を減らすことは難しいため、しっかりと案件を見極めることが重要です。

残業が少ない案件の特徴(大手直請け・体制が整った現場)

残業が少ない案件は、大手企業からの直請け案件や、開発体制やコンプライアンス意識がしっかりと整備されている現場に多く見られます。

大手SIerやWeb系事業会社などは、コンプライアンスや社会的信用を重視しているため、労務管理が厳格です。

無理なスケジュールを組むこと自体がリスクとみなされるため、もともと余裕を持った人員配置や工数管理が行われています。

また、二次請け、三次請けといった多重下請け構造の下層でない案件ほど、元請けとの意思疎通がスムーズです。

そのため、無茶な仕様変更などの突発的な残業が発生しにくい傾向にあります。

残業が少ない案件に参画するには、直請けに近く、大手などのプロジェクト管理が機能している現場を積極的に見極めることで、不要な残業ばかりの案件を回避することができます。

SES企業によって残業実態はどのくらい違うのか

所属するSES企業の方針によっても、実際の残業量は大きく変わります

エンジニアの心身を大切にするSES企業と売上第一のSES企業とでは対応が全く異なるからです。

エンジニアファーストを掲げるSES企業では、営業担当がクライアントと交渉し、過度な残業が発生しないよう事前に調整を行ったり、残業が増えた際に現場へ改善要求を出したりします。

一方で、売上至上主義の会社は「現場の言うことは絶対」というスタンスのため、エンジニアが過酷な残業に苦しんでいても見て見ぬふりをすることがあります。

優良なSES企業では「月平均残業時間」を公開しており、その数値が低いことをアピールして採用を行うことが多いです。

そのため、残業時間についてSES企業側で何か対策を行っているかどうかは「月平均残業時間を公開しているか?」という点で確認することができるといえるでしょう。

SESでの残業は案件次第ではありますが、その現場をコントロールし、エンジニアを守ってくれるのは所属企業です。

会社選びの段階で、残業に対する企業のスタンスを見極めることが重要です。

SESで残業を減らすための工夫

SESエンジニアとして働く中で、無駄な残業を減らし、プライベートや自習時間を確保するためには、ただ会社や現場の指示を待つだけでは不十分です。

エンジニア自身が主体的に動き、環境を選び取っていく姿勢が求められます。

ここでは、案件選びの段階から日々の業務、さらにはキャリア形成に至るまで、自分の力で残業を減らすための具体的な行動について紹介します。

案件選びの段階で労働環境を見極める

残業の少ない案件を選ぶには、まず案件選びの際の面談で、現場の労働環境を見極めることが重要です。

一度案件に参画してしまうと、契約期間中は案件を抜けることが難しいため、参画する前に現場の状況を正確に把握できる情報を引き出す必要があります。

面談では、企業側がエンジニアを選考する場でもありますが、同時に、エンジニア側も案件について判断する場でもあることを意識しておくのが大切です。

面談時に「現在のチームの平均的な残業時間はどのくらいですか?」「実際に皆さんは何時頃退社されていますか?」とストレートに質問してみましょう。

「時期によるので何とも…」と言葉を濁されたり、「稼働は高めです」と具体的な数値を教えてもらえない場合は、恒常的に残業が発生している可能性が高いです。

自身のワークライフバランスや心身の健康を守るためにも、案件参画前に疑問点をすべてクリアにし、納得したうえで案件を選ぶことを意識しましょう。

営業担当に条件をしっかり伝える

自社の営業担当に、希望する残業時間の上限などの条件をしっかり伝えることも重要です。

エンジニアのことを考えてくれる営業担当であれば、エンジニアのスキルセットだけではなく、希望条件について考慮した案件紹介を行ってくれます。

そのため、「残業は月20時間以内に抑えたい」や「育児があるため、19時に退社できるような案件にしてほしい」など具体的な条件は営業に伝えておいたほうが良いでしょう。

自社の営業担当には、必要以上に自分をよく見せようとするのではなく、無理のない範囲で条件を提示しておくことで、働きやすい案件を継続的に受けられるため結果的に長く働くことが可能です。

スキルを磨きホワイト案件を選べる立場になる

スキルを磨くことで残業の少ないホワイトな案件を選べる立場になることもおすすめです。

エンジニアとしての市場価値を上げることで、参画できる案件数が増え、残業の少ない案件も選べるようになります。

また、クライアント側も優秀な人材に長く働いてほしいため、労働環境への配慮している傾向にあります。

磨くスキルは自分の経歴に沿ったものが望ましいですが、人気のツールや技術について知見を深めること、マネジメント職などにキャリアチェンジすることで、市場価値を上げることが可能です。

例えば、近年増えているクラウド技術(AWS、Azure)やAI関連の技術についての知見、またはPL/PM経験のあるエンジニアは重宝される傾向にあります。

そのため、自分の経歴とあわせて、最新の技術トレンドや需要を意識して、スキルを磨くこともおすすめです。

転職・キャリアチェンジも視野に入れる

もしも現在の現場やSES企業側に、残業についての改善の兆しが全くない場合には、転職やキャリアチェンジも考えてみることをおすすめします。

SES企業の中には、残念ながらエンジニアを使い捨てのように考える会社もごく一部存在します。

個人の努力などで解決できない構造的な原因が存在する場合には、はっきり見切りをつけて次のキャリアを考えた方が時間の節約にもなります。

残業の少ないホワイト企業への転職はもちろん、フリーランスとして独立し会社員時代よりも自由に案件を選ぶことも可能です。

SESの残業に辛いと感じたら無理をしすぎないことが大切です。

より良い環境を求めて動くことは、決して逃げではなく、キャリアを守るための前向きな戦略です。

まとめ:SESエンジニアに資格は武器になるが、実務経験とセットで活かすことが重要

本記事では、SESの残業の実態や仕組み、そして対策について解説してきました。

SESだからといって必ずしも残業が多い案件ばかりではなく、残業が比較的少ない案件もあります。

みなし残業や精算幅といった契約の仕組みを正しく理解し、面談での見極めや営業担当への交渉を行うことで、過度な残業は避けることができます。

もし現状、理不尽な残業に悩まされているのであれば、スキルを磨いて案件を選べる立場になるか、よりエンジニアを大切にする企業への転職やフリーランスとしての独立を検討してみてください

心身ともに健康で働ける環境を、ただ待つのではなく、自らの手で選び取っていきましょう。

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【著者プロフィール】
前田 奈央子
エンジニア歴: 7年+
システムエンジニア歴(バックエンド): 3年+

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